まばゆいほど輝いて

それでも今日は往く

中高6年間吹奏楽部に所属していたオタクが響け!ユーフォニアムを語る

 
京アニの新作、響け!ユーフォニアムを見ています。いよいよコンクールへと動き出しますね。このアニメ、吹奏楽部あるあるというか、不愉快なことの連続で吹奏楽経験者としては大変イライラするアニメになっています(笑)

あらすじ:主人公の久美子が新しい地で心機一転高校生活を始めるというところから物語はスタートする。久美子が通う北宇治高校の吹奏楽部へのファーストインプレッションはまさしく「下手」そのものだった。クラスでできた友人の勧めの下、悩んだ末に吹奏楽部へ入部するがそこで高校時代に因縁のあった同級生、高坂さんと再会することになる。久美子は高校最後のコンクールで所謂『ダメ金』*1だったことに悔しがる高坂さんに「まさか本当に全国にいけると思っていたの?」と問い、その後久美子は高坂さんへ対し一方的に自責の念を抱くことになる。そして北宇治高校吹奏楽部には新しい顧問が来ることなり、部の雰囲気は一変することになった。・・・
 
というのがこのアニメの大まかなストーリーについてなんですが・・・まず一言、「京アニらしくない!」というのが第一声です。今までの京アニ作品って、高校生を主人公としながらもどこかファンタジーじみていたと思うんです。あんまり現実の世界を連想させないと言うか、あからさまな演出をしていたりと「所詮アニメだ」と言わざる終えない部分がありました。でもこのアニメは全てにモデルがあります。サンライズフェスティバルだって、コンクールだって、顧問への反発だって、部員内での闘争だって、全部吹奏楽部の’’実情’’なんですよね。生々しすぎる表現。吹奏楽は女の園であり男子は奴隷みたいなものだ、とよく言われるのですが、まさに女子同士のドロドロや醜さ、葛藤を描いているのではないでしょうか。
 
さて、ではここから物語に沿って「あるある」とともに4話までを振り返って、このアニメの考察と吹奏楽の魅力について語っていきたいと思います。
 
 
①「もう吹奏楽はやらない」あるある
一つ目にしてこれはあるあるにしていいのか・・・とも思いましたが個人的にすごく共感したので選びました。吹奏楽部を経験したことがある人ならわかると思うのですが、精神的にも肉体的にも物凄くキツイです。1日8時間練習は当たり前、朝連もあるし帰りが遅くなる日もある。考え方の違いや意見の食い違いで口論することだって少なくないし、おまけに女子中学生/高校生には付き物の悪口や陰口だって存在する。こんな日々を1度でも送ってみたら当然「もう吹奏楽はやらない」と思うはずですよね。ましてや北宇治高校のあの下手さも相乗してますます気は引けるはずです。誰だって入部するときは真面目に取り組みたいと思ってるし、ましてや高校1年生の春なんて夢いっぱいの時期です。そんなときにわざわざ過酷で道を選ぶ必要などないのですから。なのに久美子は吹奏楽部に入部することを決めた。友人が入ると言ったのもあるでしょうが、それはただひとつのきっかけに過ぎないでしょう。音楽を諦めることができなかった。自分には音楽しかないと思った。だから久美子は吹奏楽部を’’辞めること’’ができなかったんではないでしょうか。
 
②「部員間の温度差」あるある
これは中学時代の久美子と高坂さんとの関係と高校時代の久美子と2年生部員・葵ちゃん(久美子の小学生時代の友人であり北宇治高校での先輩)が対になっています。中学時代に上の大会を目指していた高坂さんに自分は無理だと思っていたと告げたことにより罪の意識を持っていた久美子ですが、高校時代になると2年の先輩に自ら「合わせませんか」と言うようになっている。この心境の変化については説明するための十分な描写がまだなされていないと思うのですが(ただ単に高坂さんに感化されただけかもしれませんが・・・)、これは彼女にしてみれば大きな成長ではないでしょうか。ホルンがキャッキャして遊んでいるのを見て私はブッコロと思ったのですが、さすがにその状況に危機感を覚えたのでしょう。だんだんよい方向には向かっていると思うので練習態度についてはもう心配しなくてよさそうですが、これからは『どの程度本気でやるのか』という温度差対立も出てくるのではないでしょうか。
そして親しくしていた葵ちゃんの変化・・・これは本当にシビアな問題ですね・・・吹奏楽のコンクールって大体地区大会が7月の終わりに開催されて、都道府県大会に進むなら8月中ごろまで練習漬けなわけです。高校3年生の夏、周りの同級生は引退してすっかり受験モードに入ってる中、一人だけ部活を続けないといけないと言う不安感・・・北宇治高校のある京都府は地区大会がないのでいきなり府大会から始まるので確実に8月までは部活を続けないといけないわけです。こうした状況で楽さを求める気持ちは非常によくわかります。葵ちゃんについてはこれからのストーリー展開によってどうなるかはまだわかりませんが、個人的な予想としては今の気持ちのままじゃ続けるのは厳しいんじゃないかなぁ・・・一度線が切れてしまった人間を元に戻すにはそれなりの’’何か’’が必要ですからね。
 
③「顧問との対立」あるある
これは絶対どこの部活にもあると思うんですがいかがでしょうか!!!(全吹奏楽部員に問いたい) 公立高校に通っていたら顧問の転勤なんてよくあることだし、それで運営方針が変わる、だなんていうことも当たり前にあります。北宇治高校みたいに顧問との対立が部員間の団結力を生むときもありますし、逆に顧問との衝突で部員が2分する事だってあります。でもこれはもうひとつしか解決方法がないんですよね。『顧問が圧倒的実力を部員に見せつけ、部員に’’付いていきたい’’と思わせるカリスマ性を持っていること』!!!一見すごく難しそうに見えることかもしれませんが、コーチングの技術をしっかりと身につけ、尚且つ吹奏楽の知識に長けていることですかね。あと吹○楽○盟に顔が利くといいかもしれません。*2
 
④「地味な基礎練習」あるある
少し込み入った話になりますが、このアニメの中の基礎練習は実にリアルなものです。ティッシュを飛ばし続けることはともかく、ソルフェージュ腹式呼吸は実際の吹奏楽現場でも行われている練習法です。私は練習時間の6割ほどを基礎練習に当てていたのですが、基礎練習がきちんとできていないと様々な場面で支障が出ます。楽器をつけないで行う練習に30分を要するのは初めのうちはかなり勇気のいることかもしれません。それが効果として現れるのは先のことですし、目先の演奏を優先させたければ無意味な練習のように思われるかもしれませんが、非常に大切な練習です。余談ですがこの他にも足上げロングトーンや行進しながらのロングトーン、他にも様々な体育会練習が存在します。もはや運動部です。
 
 
4話の時点ではこんな感じですかね・・・マーチングの水色の悪魔はちょっと笑いました。分からない人は是非笑ってこらえての吹奏楽の旅を見てください。
吹奏楽というのは特殊です。スポーツだとどの競技でもインターハイがあって、優勝があって準優勝があって・・・結果がタイムや記録によって明確に表されます。しかし吹奏楽では、連盟が主催するコンクールがあり、審査員がABCの3段階で評価する。主観によって評価が変わります。もちろん審査員はその道のプロですが、それでも人間です。もともと音楽に順位をつけるものではないというのが私の考え方ですが、このコンクールのシステムについては賛同しています。自分の頑張りを評価してくれるのはコンクールしかありません。でも、自分だけが頑張るのでは良い結果はもらえません。仲間と切磋琢磨し、ぶつかり合い、本音を言い合って、そこでようやくひとつの’’音楽’’が完成するのです。そこが吹奏楽の難しいところでもあります。ただ、高坂さんのように「悔しい」と涙を流せる人がひとりでもいるなら、その部に未来はあるのではないでしょうか。
人は変わらないものを笑うくせに変わっていくものを恐れます。古いものに囚われてはいけないし、新しいものを無節操に享受するのもどうなのでしょうか。今生きている世界を当然だと思ってはいけない。もしこのダイアリを見てくださった現役の吹奏楽部員がいるなら、その方は精一杯、自分が正しいと思うことを頑張ってください。後悔しないなんていうことはありえません。でも、あなたが’’今’’一番正しいと思うやり方で、自分自身を表現してみてください。そして、もう吹奏楽は辞めてしまったOB、OGの皆様、私と一緒にユーフォニアムを見ながら自分の青春をもう一度思い出しませんか。きっと楽しいことばかりではなかったと思いますが、それは紛れもなくあなたの’’青春’’です。
 

*1:上の大会へ進めない金賞のこと。金賞には2週類あり、上の大会(地区大会だと都道府県大会・都道府県大会だと地方大会・地方大会だと全国大会)に進めない金賞と進める金賞があり、吹奏楽部に所属する生徒の多くはその’’上にいけない金賞’’のことを『ダメ金』『カラ金』と言う

*2:あまり大きな声では言えませんがこの○盟での立ち居地がコンクールの結果に良くも悪くも関連してくることもある・・・かもしれない